2017年に観て良かった映画まとめ
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
2017年はいろいろなことを始めてみたものの、実りは少なく、結果的にじたばたしてたら終わっていたような一年でした。
2018年は成果を実感できる年にしたいですね。
もう年が明けちゃいましたが、昨年観て良かった映画(新作・旧作両方)をまとめてみようと思います。
昨年観た映画は新旧合わせて77本。相変わらず、観てない人に比べたら大分観てるけど、観てる人に比べたら全然観てないくらいの本数。
順番は観たのが早い順です。
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○新作
・『お嬢さん』
『少女革命ウテナ』っぽいという前評判で観に行くというミーハーなことをしたが、素晴らしい快作だった。男性による抑圧・支配を、女二人が乗り越えていくのは観ていて気持ちがいい。それに、映像がとても綺麗で、グイグイ引き込まれた。
伏線を確認するために2回観たが、1回目にちょっと冗長に感じたシーンもちゃんと面白かった。
ウテナかどうかは各自判断ということで。
・『メッセージ』
テッド・チャンの「あなたの人生の物語」の映画化ということで期待度が高く、同時にどんなものになるのかという不安はあったこ、チャンの短編の映画化としてはこれ以上ない出来だったんじゃなかと思う。語りたいことはサークルの会誌座談会企画でだいたい語ったけど、原作にない要素もご愛敬で良かった。麻雀とか。
今年は『複製された男』『ブレードランナー 2049』を観て、ヴィルヌーヴ作品は自分に合ってないんじゃないかと少し思ったが、この映画は別。静的な雰囲気が作品に非常に合っていると思う。
・『ムーンライト』
『お嬢さん』に続いて三部構成のLGBT映画。
とは言うものの、この映画をLGBT映画として括るのにはちょっと違和感がある。というのも、この作品は親からのネグレクト、麻薬、貧困、いじめなどの要素が絡み合っているからだ。最初に観たとき、ゲイの恋愛がセンチメンタルすぎ、美化されすぎて描かれているように思えたのだ。だから当初の自分の評価は「恋愛要素以外は素晴らしい」というものだった。ただ、この批評(元ゲイ雑誌編集長が語る映画「ムーンライト」これ本当に”ゲイ”映画なの? | Letibee Life)を読んで、考えが変わった。つまり主人公は(辞書的な意味での)ゲイじゃないんじゃないか、ということ。前評判で「主人公はゲイ」という思い込みをしていたせいで、穿った見方をしてしまっていた可能性があったと気付くことができた。そう考えると、この映画のラストは胸を打つ素晴らしいものだと思う。やはりセンチメンタルすぎるところはあると思うが。
それから、黒人男性をここまで美しく撮った映画は観たことがない。それだけでももう一度観たくなる。
・『20センチュリー・ウーマン』
おしゃれで楽しい映画。エル・ファニングが可愛い。
舞台となる1970年代後半のキラキラして詰め込んだような感じ。作品の魅力をノスタルジーに寄せすぎているような気がしなくもないけど、でもその郷愁が良いのだ。少年の、母との接し方を通した成長物語としても良いものだった。
・『ベイビー・ドライバー』
今年の新作の中で、一番観ていて楽しい映画だった。
挿入曲に合わせて炸裂するカー・アクション。細かいところまで凝って演出されていて2時間全く飽きる事がない。エドガー・ライト作品では、他に『ショーン・オブ・ザ・デッド』の"Don't Stop Me Now"に合わせてゾンビを叩きまくるシーンが好きだが、あれが全編に渡って続いている感じ。個人的には、主人公のイヤホンが外されて音楽が止まり、グッとシリアスになる瞬間が好き。
みんな『ショーン・オブ・ザ・デッド』も観てくれwww.youtube.com
○旧作
・『ファンタスティックMr.FOX』
ロアルド・ダール原作のアニメ作品。有名俳優たちが声をあてる動物たちがキュート。
『ライフ・アクアンティック』、『天才マックスの世界』、『グランド・ブタペスト・ホテル』と観てきて大好きになったウェス・アンダーソン作品だが、その中でもこの『ファンタスティックMr.FOX』は特に好き。きっと、動物たちのおもちゃのような世界が、アンダーソンの作風にバッチリハマっているのだろう。柳下毅一郎は、アンダーソンは「人間を人形のように撮」るが、これは「人形を人間のように撮った映画」と評していた。
観ていて本当に楽しい、心地よい気分になれる映画。
・『オールド・ボーイ』(2003)
『お嬢さん』が良かったので観たパク・チャヌク作品。
すさまじい大傑作で、オールタイムベスト級だった。タランティーノが絶賛するのも良くわかる。
残酷な復讐譚で、後味は決して良いものではないが、衝撃的でインパクトの強い映画。前情報が全然ないほうが楽しめると思うので、このくらいで。
・『恋人たち』(2015)
『ハッシュ!』『ぐるりのこと』を観て大好きになった橋口亮輔監督作品だが、本作はさらに頭抜けて素晴らしかった。
監督が「飲み込めない想いを飲みこみながら生きている人が、この日本にどれだけいるのだろう。今の日本が抱えていること、そして“人間の感情”をちゃんと描きたい」と語っているように、主流の映画では描かれない感情を掬い取ってくれている映画だと思う。世界の理不尽にぶち当たって、それを解決することができず、ただもがきながら生き続ける人間たちの泥臭さ。
メインキャスト3人はオーディションで選ばれた新人俳優ということだが、その新人の良さ、“リアル”な人間の持つ深みみたいなものを最大限に引き出した、奇跡のような作品だと思う。
・『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)
これもとんでもない傑作だった。それと、なんだこの邦題は、詐欺じゃねえか。
後半の寂寥感が素晴らしい。巨大なシステムの欠陥と崩壊を悟った人たちの絶望が、トリックスターを演じるライアン・ゴズリングのゲスさで際立っている。ライアン・ゴズリングには『ラ・ラ・ランド』とかよりも、こういうゲスの役をもっとやってほしい!
みんな言っているけど、住宅バブルを確かめに行くシーンが、何とも言えず素晴らしい。
・『悪魔のいけにえ』(1974)
あんまりスプラッタな感じのホラー映画は好きじゃないのだが、この作品は別格だった。ほとんどギャグみたいなB級ホラー映画のはずなのに、ちゃんと怖いし、息を飲むほど美しい。そしてあのラストシーンの完璧さ。みんなに観てほしい傑作。
・『グッバイ・レーニン!』(2004)
自分はこういう映画に弱いなあと。
自分の中では今年観た『20センチュリー・ウーマン』と対を成している物語。チャキチャキ系の母親を通して、主人公の男が成長する話。コメディタッチであるおかげで、主人公の母親への愛がより際立っているように思った。
・『狂い咲き・サンダーロード』(1980)
最高のカルト映画。衝撃的。とても力強い。
近未来の日本を舞台にした暴走族もので、族同士の抗争が描かれるのかと思いきや、主人公がいきなり右翼集団に入隊してシゴかれる、など全く予想のつかない展開の数々。
・『巨人と玩具』(1958)
初の増村保造作品だったが、こんなにコミカルで楽しい映画を作る人とは知らなかった。
息もつかせぬ怒濤の展開。巨大なシステムである資本主義の中に囚われてしまった人間の悲劇・喜劇というのは、ありきたりな題材ではあると思うのだけれども、それが巧みに演出されていて、旧さを感じさせない。個人的にはとても新鮮に思えたのだ。大仰で芝居がかったセリフ、俳優たちのまくし立てるような早口の棒読み、マンガのようなスピーディな展開、これらが「巨人」たるシステムの中で踊る「玩具」と絶妙にマッチしているように思う。