雑記09:Vtuberとラノベ
2つのブームの類似
就活のせいであんまりTwitterを見ないようにしているので、ブログ更新が捗る捗る。
で、ヴァーチャルYouTuberの話。
「こいつヴァーチャルYouTuberの話ばっかりしてんな」と思われそうだが、これだけ盛り上がっていると、やはり書きたいことが沢山でてくる。
やはり、今までYouTubeをあまり観ていなかったオタク・サブカル層が、バーチャルYouTuberの流行で一気に引き込まれていったのは見逃せない動きだろうと思う。
さらに、この流行にゼニの臭いを嗅ぎつけて、企業も大量に参入してきた。
ブームはまだしばらくは続きそうだ。
自分も就活なんかやってないで、VTuberが勉強を教えるヴァーチャル学習塾とかを起業した方がいいかもしれない。*1
そんなヴァーチャルYouTuberブームだが、その面白さの一側面として、あらゆる才能が集まってきているところがあるんじゃないかと思う。
つまり、今までは活動の場が別であった人たち、あるいは活動の場がなかった人たちが、流行に乗って同じプラットフォームに大挙して押し寄せている、そういう部分が面白いと感じるのだ。
モデリングをする人、絵を描く人、楽曲を作る人、ゲームを製作する人、劇を演じる人、歌を唄う人、などなど、多くの人がヴァーチャルYouTuberとして活動している。
そうした多種多様な才能が、一同に会している面白さだ。
もともと、ヴァーチャルYouTuberは「ヴァーチャル空間上にいる架空のキャラクター」であり、ほとんどアニメキャラに近い存在だったはずだ。キズナアイや電脳少女シロのように。
それが、のじゃろりおじさんのブレイクスルーによって、「人間の前にキャラクターを一枚噛ませていればヴァーチャルYouTuber」という状況になっていった。
生身の人間を出さなければヴァーチャルYouTuber、という状況である。
それどころか、その定義すら今やかなりあやふやだ。ヴァーチャル空間どころか、現実世界が映っているものもある。というか「現実系ヴァーチャルYouTuber」なるものも現れてきた。もうメチャクチャである。
今のありとあらゆる才能が「ヴァーチャル」な存在としてYouTubeに参入している状況は、ヴァーチャルYouTuberの持つ「ヴァーチャル」の概念が、かなり柔軟なものだったからに他ならないだろう。
これは全盛期のラノベブームに似ているように思うのだ。
つまり、便利な概念のもとにジャンル横断的な才能が集まっている、という類似点。
ライトノベルが流行したときも、ライトノベルというプラットフォームにあらゆる才能の書き手が押し寄せた。それぞれが書いたものは、ファンタジーや恋愛やホラーやミステリやSFだったりしたわけだが、その全てが「ライトノベル」の括りに密集していたのだ。
それはやはり、ライトノベルの持つ「ライト」の概念が柔軟だったからだろう。
当時のライトノベル作家たちの作品に、ライトノベルレーベルが無ければラノベに分類されていなかったであろうものが多いように、現在のヴァーチャルYouTuberたちの動画には、ヴァーチャルYouTuberブームが無ければ別の括りに入れられていたであろう作品も多い。
例えば、周りのオタクたちに大人気な 月ノ美兎と鳩羽つぐにしたってそういう面はあるだろう。
月ノ美兎は素が出すぎていて、ヴァーチャルYouTuberというより、インターネットおもしろお喋りラジオパーソンといった風情だし、鳩羽つぐに至ってはショートアニメーション・短編映像作品だ。自分は、鳩羽つぐの動画が「日本アニメ(ーター)見本市」の中に入っていても違和感無いと思う。
そんな感じでヴァーチャルYouTuberブームとラノベブームの類似性について語ってみたところで、実際に自分が注目しているジャンル横断的なヴァーチャルYouTuberを何人か紹介してみたいと思う。
●ミソシタ
ミソシタは作曲・映像・歌唱と多才ぶりを発揮しているヴァーチャルYouTuberである。
彼(彼女?)の動画は、ヴァーチャルYouTuberの枠組みが無ければ先鋭的な芸術として評価されていただろうと思う。
ミソシタ自身は、全裸で青白くて頭がクソ長くておっぱいという異様な外見をしているが、注目すべきなのは天才的な楽曲だろう。超クールでエモいのだ。
とくに現段階での最高傑作と目される『『ミソシタ#9』ミッドナイト・ファイティングブリーフ』は素晴らしい。
最初は、group_inouとモーモールルギャバンを足して2で割ったようなグルーヴ感という印象だったのだが、聴いているうちにどんどん勇気が湧いてくるのだ。歌詞はほとんど下ネタなんだけれど、それを真剣に歌い上げるミソシタ。
映像がまた最高で、個室ビデオ空間を木馬に跨ったミソシタが驀進していくというもの。セックスには決して至らない個室ビデオという閉じられた暗い性空間を、幼児性の象徴である木馬に乗り、ただひたすらに真っすぐ進んでいく。最後に手を繋いだ二人のミソシタが現れるところまで含めて完璧な映像。これ以上エモい映像があるか。*2
そんな曲。
●日雇礼子
バーチャルその日暮らしお姉さんの日雇礼子さん。
バーチャルなのはキャラクターだけで、それ以外に映っているのは大阪の圧倒的なリアルである。
そう、西成(あいりん地区)を歩きながら紹介してくれるバーチャルYouTuberなのだ。
その紹介動画は圧倒的なリアリティを誇っており、紹介してくれるエピソードの一つ一つは強烈な説得力を持っている。実際に西成で日雇い労働をした者にしか出せないであろう“圧”があるのだ。
しかし、その紹介の語り口はむしろ清々しく軽快だ。タンクトップ姿の可愛いお姉さんに西成を楽しく案内してもらえる。そんな素晴らしい動画。
●世界クルミ
世界クルミは、ヴァーチャルYouTuber古参の中でも独特な空気を放つ、自分を女子高生型AIと言い張る小麦粉の塊だ。
見ての通り、「謎のキャラクターの良く分からないコント」というのがメインの投稿動画。
彼(彼女?)もまた天才だと思う。決してスタイリッシュではないが、何とも言えず泥臭いシュールさがある。ゼロ年代前半のFLASH感もあり、なんとも懐かしい笑いを体験できること請け合いだ。
ツイッターで世界クルミはミソシタとのキャラ被りを心配していたが、全く被ってないと思う。
●高い城のアムフォ
完全に人形劇である。
ヴァーチャルYouTuberとは何なのか、考えることになったきっかけの一人。
合成音声で喋りリモコン操作でモーションが動くバーチャルYouTuberのらきゃっとを指して「バーチャル浄瑠璃」と言われることがあるように、一部のバーチャルYouTuberには浄瑠璃的、人形劇的な要素があることは否めないが、
高い城のアムフォに関しては完全にアナログ人形劇である。
というか完全に人間の手が映っている。バーチャルとは何なのか。
それはさておき、注目すべきは、中世風な創作異世界の文化だろう。毎回、謎の楽器や、謎の呪術や、謎の飲み物や、チャトランガ系っぽい謎のボードゲームなどを紹介してくれる。
もちろん異世界の言語で、だ。
そんな独特の世界に浸れる動画を上げてくれている。
ちなみに「高い城の」と聞くと、SFファンはフィリップ・K・ディックを思い出してしまうが、今のところディック要素やディストピア要素は無さそうである。
だらだらと色々書いてきたが、ヴァーチャルYouTuberという奇妙な文化現象にはまだまだ語ってみたいことが沢山ある。
ブログ記事に書くことは、書きながら考える行為でもあるので、また何回かヴァーチャルYouTuberについての記事を書くと思う。