今週の海外短編:ローカス誌のおすすめリストの話、Andy Weir "The Egg"
海外未訳短編ディグのモチベーションのために、毎週土曜日の夕方に短編をいくつか選んでを紹介していく試みシリーズ。
ローカス誌のジャンル別オススメリストの話
2/1に、ローカス誌が選ぶオススメリストが公開された。
短編部門では、前回紹介したRebecca Campbell "An Important Failure" や、前々回紹介したM. Rickert "The Little Witch"も取り上げられている。
しばらくはこのリストの未読から拾い読みしていこうかなと思う。
Maria Haskinsについて
リストのなかで、個人的に注目している作家はMaria Haskins。おそらく日本では全く紹介されていないと思うけど、幻想的な短編を得意とする実力のある作家だと思う。Haskinsの"Brightest Lights of Heaven"は女の子2人の青春×ホラー短編で、藤野可織を思いだすような巧さのある傑作だった。これは実は『BABELZINE』Vol.1で翻訳したいと思い作者にメールを送るも、翻訳の許可を得ることはできなかったという経緯がある。
ローカスのリストにあったHaskinsの作品が"Six Dreams About The Train"。列車をめぐる6つの夢の断章を通じて、語り手と"You"の関係が仄めかされる、美しいショートショート。
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Andy Weir "The Egg"
アンディ・ウィアー「卵」
ショートショートといえば、最近『火星の人』のアンディ・ウィアーが「卵」というショートショートをホームページで発表していることを知った。しかも、キッチリ日本語訳までついている。
ぜんぜん話題になっているイメージがなかったのでビミョウな作品なのかと思ったら、これがすごく面白かった(なんでみんな教えてくれなかったんですか?)。奇想の切れ味と、この短さだからこそ許される壮大さが詰まった作品で、個人的にはショートショートの一つの理想とさえ思う。
ウィアーは底抜けに優しくて、どこまでも人間の可能性を信じている(信じたい)作家なのかもしれないと思う。
実はこの作品を知ったのはYouTubeの"The Egg"を映像化した作品からだった。サイエンス分野の動画を数多く手掛けるKurzgesagtによってアニメ化されているのだが、このアニメーションが非常に美しい。この動画もぜひ観てほしい。