ゲーム『Butterfly Soup』レビュー
TOEFLiBTの受験日が近づいているのに、全然勉強する気が起きない、遊びたい。でも自堕落に遊んでいると、こんなことをしていていいのか、という罪悪感に襲われる。
……というのを年末年始から繰り返していたが、天才なのでこのフラストレーションを解決する方法を考え付いた。
英語でリリースされているゲームをプレイすれば罪悪感は薄れるのである。
そういうわけで英語圏でリリースされているゲームを漁っていたら、これに良さそうなのが紹介されているを見つけた。
それがButtefly Soup。
百合だというのでやってみたところ、これがめっぽう面白かった。
ノベルゲームなんて何年もやってなかったけど、何時間もぶっつづけで遊んでしまった。
ということで簡単なレビューを。
「Butterfly Soup」
Butterfly Soup (my game about gay asian girls playing baseball and falling in love) is out AND FREE!!!! https://t.co/IOX3K9zjp0 pic.twitter.com/6554gZqZz5
— Brianna Lei (@Brii_U) 2017年9月16日
23歳の中国系アメリカ人、Brianna Leiによるフリーのノベルゲーム。
サイトに「A visual novel about gay asian girls playing baseball and falling in love. 」と説明があるように、アジア系アメリカ人の女子高生たちが野球を通じてガールミーツガールするラブコメ。
フリーゲームで無料、なのだけど、設定資料集的なものが5$で買えるから支援してねとのこと。
ストーリー
主な筋としては、主人公のDiyaが自分のセクシャリティを自覚し始め、幼馴染のMin-seoに対する気持ちに気づいていく、というもの。
そして、軽い対人恐怖症のDiyaが、自分自身を受け入れられるか、そして野球を通じて周囲の人たちと友情を築けるかが物語の主眼になってくる。
魅力
こう書いてしまうと、真面目でおカタいゲームのようだが、全然そんなことはない。基本的には女子高生たちの楽しいドタバタ劇だ。もちろんシリアスなシーンもあるのだが、全編に渡ってユーモアに満ちていてコメディとしてもめちゃくちゃに良くできている。自分は何回も爆笑してしまった。
Diyaの問題だけでなく、Min-seoの毒親や、マイノリティの問題、登場人物が抱える障害など、シリアスな要素は多いが、それがあくまで爽やかに、コメディな日常のなかの一要素として描かれているのが良い。
マイノリティや障害、毒親などといったシリアスなテーマを、独特のユーモアで朗らかに軽やかに描いているが、この作品の最大の魅力だと思う。
作者がインタビューで明かしているように、このゲームは『逆転裁判』から大きな影響を受けているらしい。確かにそう言われてみれば、会話のテンポとかギャグの雰囲気は『逆転裁判』にかなり近いと思う。
あとは作中でも言及があった『おおきく振りかぶって』の影響もちょっとあるかな。対人恐怖症のDiyaの性格は、おお振りの三橋を思い起こさせるところがある。
それから、個人製作としては抜群に絵が上手く、キャラクターがみんな可愛い。
all together pic.twitter.com/8393ZuPEX1
— Brianna Lei (@Brii_U) 2017年11月5日
そして、平均プレイ時間は3-4時間ということで、手軽に遊べるゲーム。のはずだけれど、これはネイティブがプレイした場合の時間であって、自分の英語力ではふつうに10時間とかじゃ済まないくらいかかった。
平易な英語で読みやすいけど、スラングも多いし。
キャラクター
メインキャラクターの4人のうち3人がビアンで1人がバイとホームページに書いてあったので、最初に「おいおいそんなにビアンの割合高いわけないじゃんかよリアリティないなあ」などと思っていたが、どっこい、どのキャラクターも繊細に作りこまれていて、真に迫った「リアル」な魅力があった。
メインキャラクターの4人については小学生のころのエピソードまで豊富に練り込まれていて、なぜそういう性格になったのかまで丁寧に考えられて書かれていた。
あとは説明するよりもプレイしてもらった方が早いだろうと思う。
各キャラの細かい設定やストーリーのネタバレをしても野暮だろうし。
プレイしてみて、個人的にはアジア系アメリカ人の文化をいろいろと知ることができたりもして面白かった。
百合漫画と野球が好きな某後輩に勧めたいゲーム。
何はともあれローカライズしてほしいなあと思う。日本語でレビューしているものもほとんど全く見つからなかったので、日本語版が出るにはもうちょっとかかるだろうけど。
続編の構想もあるようなので楽しみ。