トマト倉庫八丁目

小説、漫画、映画、ゲームなどなど

映画『君たちはどう生きるか』と宮崎駿のエゴ

6歳の誕生日、自分が買ってもらったのは『となりのトトロ』のVHSだった。 自分はもらったVHSを、何度も何度も、テープがすり切れるまで観た。 ふわふわで愛らしいトトロが、大人にはわからない神秘の世界に誘ってくれるこの作品が好きで好きでたまらなかった…

あなたは「エッチな小説を読ませてもらいま賞」を見届けたか

あなたは先日の文学フリマ東京で、「ラブホテル」と書かれたTシャツを着た人物がピンク色をしたハートラミネ加工の表紙のアンソロジーを頒布していることに気がついただろうか。 そう、その人物が頒布していた同人誌こそ『エッチな小説を読ませてもらいま賞 …

Phantonymな日本語

比較的最近発明された英単語にphantonymというのがある。 意味は「よく誤用される言葉」、「その音・読み方のせいでAの意味に思われることが多いが、実際はBの意味である言葉」だ。 初出として挙げられている例を見てみよう。Wikipediaからの孫引きになるが…

ONE PIECE FILM REDとファミリー(あるいは成熟について)

ONE PIECEの最新映画『ONE PIECE FILM RED』を観てきた。 文句なしに面白く、素晴らしい傑作だった。 大作マンガのスピンオフ的なマンガで、これだけ主要キャラの見せ場をつくり、かつ現実ともコラボしながら元の作品の良さを一切損なわずにこれだけ面白いの…

わくわく近況報告

●お仕事が燃えている 普通のサラリーマンが一生に一度出くわすか出くわさないかみたいな案件にブチ当たっている。 しかもかなり爆心地に近いところで。 忙しいだけでなく、精神的にもかなりキツいことをやらされているのがツラい。 具体的には言うことができ…

今週の海外短編:ローカス誌のおすすめリストの話、Andy Weir "The Egg"

海外未訳短編ディグのモチベーションのために、毎週土曜日の夕方に短編をいくつか選んでを紹介していく試みシリーズ。 ローカス誌のジャンル別オススメリストの話 2/1に、ローカス誌が選ぶオススメリストが公開された。 locusmag.com 短編部門では、前回紹介…

今週の海外短編:Rebecca Campbell "An Important Failure" ,Andrew Dana Hudson & C.Y. Ballard ”Your Mind is the Superfund Site”

毎週土曜日の夕方にその週に読んだ短編からいくつか選んでを紹介していく試みシリーズ。 Rebecca Campbell "An Important Failure" (Clarkesworld Magazine) レベッカ・キャンベル「ある大きな失敗」 あらすじ:楽器職人である主人公メイソンは、天才少女デ…

今週の海外短編:Lavie Tidhar "Judge Dee and the Limits of the Law", M. Rickert “The Little Witch”, など

海外短編ディグりのモチベーションを保つために、毎週土曜日の夕方にその週に読んだ短編からいくつか選んでを紹介していこうと思う。 今週はファンタジー、ホラー多め。 Lavie Tidhar "Judge Dee and the Limits of the Law" ラヴィ・ティドハー「ジャッジ・…

雑記:再び、成熟について

「成熟」と国家、家族、社会について 誕生日になると、いつも成熟についてぼんやりと考える。 4年前の誕生日にはこんな記事を書いたりした。 成熟を定義するのが非常に難しい時代だと思う。 4年前も言及したけれど、モデルケースがあまりにもないのだ。ポス…

今更、アドラー心理学がなぜあんなに流行ったのか考えてみる

『嫌われる勇気』を読む アドラー心理学の「目的論」について アドラー心理学の「全体論」について 2010年代の潮流と「反主知主義」の思想 『嫌われる勇気』を読む ひょんなことから『嫌われる勇気』を読んだ。 周知の通り、この本は大変なベストセラーで日…

「serial experiments lain」のしおり

今は昔、大学に入ってからはじめてserial experiments lain を観た僕は、もの凄い衝撃を受けた。「こんなアニメがあるのか」と心から思った。 興奮した18歳の僕は、みんなにもこのアニメを知ってもらいたい! と思い、サークルで上映会をやることを決意した…

20200309日記:目的を持ったヤツがちゃくちゃくと準備をしてる

ザ・タイマーズの「争いの河」を最初に聴いたときは全然ピンと来なかった。 大人たちが言い争ってる 原発や米や税金で言い争ってる 大人たちが言い争ってる 社会や文化、経済で争ってる その間に目的を持った奴がちゃくちゃくと準備をしてる (チャクチャク …

20200308日記:楽しみはみんな忘れろ

コロナウイルスのせいで暗い気持ちになっている。 雨降りの日曜日がさらにそれに拍車をかける。 楽しみにしていたイベントも全て中止になってしまった。 井上陽水の「夕立」の歌詞を思い出すような容赦なさで、すべてが取りやめになっていく。 計画は全部中…

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が一点だけ本当に許せなかったので文句を言う

今回のゴジラは絶対にやってはいけないことをやってしまったと思う。 たとえ、どんな前提があったとしても、「日本人が核兵器の犠牲になることで人類が救われる」映画をアメリカ人が作ってはいけない。 それも、ゴジラを冠する映画でこれをやってしまったこ…

ビューティフル・ドリーマー、トゥルーマン・ショー、VRChat

※ビューティフル・ドリーマーとトゥルーマン・ショーのネタバレが若干あります。ご注意ください。 この前、久しぶりに『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を見返してみたんだが、これが面白い面白い。 各シーン絵がバチバチに決まっているうえに…

虚構の時代の果てにレンガを積む――なぜ仕事をするのか

研修で、「仕事とモチベーション」について、こんな話を聞いた。 「3人のレンガ職人」の話だ。 ディティールは違うが、大まかには以下のような話だ。 世界中を回っている旅人が,ある町はずれの1本道を歩いていると,1人の男が道の脇で難しそうな顔をして…

【バカミス列伝 序文】なぜバカミスなのか

今年の京都大学SF・幻想文学研究会が夏コミで頒布するWORKBOOK110号は、「バカミス列伝」です。 自分も何本か寄稿させていただきました。 その中で「なぜSF研でバカミスなのか」という題で序文を書かせていただきましたので、宣伝を兼ねてその序文だけ、…

VIVEを使ってのVRChat初日の記録

昨日、初めてHTC VIVEを使ってVRChatを体験したので、記念に日記を書いておこうと思う。 ヘッドマウントディスプレイが届いたのは一週間くらい前だったのだが、プレイエリアを確保するために部屋の模様替えをしたり、トラッキング用のベースステーションを設…

翻訳記事:ウエルベックの想像力(ニューヨーク・タイムズ)

ニューヨーク・タイムズのウエルベックについてのエモい記事を翻訳してみたのだが、翻訳権があるので全体に公開するのはまずい。 そんなわけでパスワードをかけてみるテスト。 はてなブログで記事にパスワードをかけて暗号化する - ふく という記事を見つけ…

【後編】 『闘争領域の拡大』と「鉄の檻」――ウエルベックと西洋人の孤独ー――

非日常的なものと化してしまった性生活、とりわけ婚姻関係の枠外における性生活は、昔の農民にみられた素朴な有機的生活の循環からいまや完全に抜け出ている人間を、なおも一切の生命の根源たる自然へとつなぎとめうるただ一つの絆となるにいたったのである…

【前編】 『闘争領域の拡大』と「鉄の檻」――ウエルベックと西洋人の孤独ー――

今日の資本主義的経済組織は既成の巨大な秩序界(コスモス)であって、個々人は生まれながらにしてその中に入りこむのだし、個々人(少なくともばらばらな個人としての)にとっては事実上、その中で生きねばならぬ変革しがたい鉄の檻として与えられているも…

雑記12:就活における面接の愉しみ方

Twitterで就活辛い芸を続けているが、実のところそんなに苦しんではいない。 いや、やっぱ辛いけど。 まあそれでも三か月近く就活やっているとかなり慣れてきて、自分がどう振る舞えばいいのか、身のこなし方もわかってきた。 就活辛い芸ばかりやっていると…

「ドキドキ文芸部」直訳のダサさ:DDLCと翻訳の問題

久しぶりに『Doki Doki Literature Club!』の話。 前回書いたのは、日本語化パッチが出るか出ないかくらいのときに書いた紹介+ネタバレ感想記事。 sawaqo11.hatenablog.com 今回は、ちょっとだけDDLCの翻訳について愚痴を書こうかと思う。 自分は英語の…

『レディ・プレイヤー 1』での「現実」と「仮想現実」

『レディ・プレイヤー 1』がすごく楽しい映画だった。 サブカルチャー・オタクカルチャーネタのエモが雪崩のように襲ってきて、中盤からずっとオイオイ泣いていた。 ただ、ラストについては違和感があった。 そこで、その違和感を中心に、ネタバレありで色…

雑記11:「あなたを動物に例えると」と聞かれたくて仕方ない

近況 先日、1社から限りなく内定に近い何かを頂いたので、来年路頭に迷うことはなさそう。 ただ、そんなに志望度の高くない企業なので、まだまだ就活は続くし、精神的にもそんなに余裕ができたわけではない感じ。 ノースキルドブ文系大学院生は、就活市場に…

自分を受け入れるための戦争:『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』レビュー

ありのままの自分を探し、その本当の自分自身を、自分で受け入れてやることは、ほとんど一生がかりの闘いだと思う。 受け入れたいはずの自分が、「ふつう」とは違う形をしていれば尚更だ。 自分が何者であるのか悩み、「ふつう」でない自分の形を持て余して…

雑記10:自己肯定感は生きていくために必要なんだ

アイドルの水野しずが前に 「自己肯定感は生きていくために必要なんだ! 自己肯定感は生きていくために必要なんだ! 自己肯定感は生きていくために必要なんだ!」 と叫び続ける動画をTwitterに上げてた気がするのだが、今探したら見つからなかった。 消して…

雑記09:Vtuberとラノベ

2つのブームの類似 就活のせいであんまりTwitterを見ないようにしているので、ブログ更新が捗る捗る。 で、ヴァーチャルYouTuberの話。 「こいつヴァーチャルYouTuberの話ばっかりしてんな」と思われそうだが、これだけ盛り上がっていると、やはり書きたい…

雑記08:河原町のジュリーはどこにいる

今日はホームレスの話をしようと思う。 夜勤バイト先の解放スペースによく出入りしていた、ホームレスのおっちゃんがいたのだ。 なかなかの臭いを放っていたこともあって、バイト先の人間からは嫌われていたが、自分は、どこかそのおっちゃんに愛着のような…

雑記07:湯シャンとクソ高いシャンプー

〇スケジュールについて 就活のせいでスケジュール帳が「ミチッ」っとなっていて、とても憂鬱である。 いや、スケジュール帳を埋めるときは楽しいのだ。 なんなら、ちょっとした満足感すらある。 自分の人生が充実しているような気持ち、あるいは「自分が他…