トマト倉庫八丁目

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夏コミのお知らせと、星雲賞コミック部門半分くらいレビュー

 

 まずは、僕が所属している京大SF・幻想文学研究会が夏コミ(C90)で頒布するやつの宣伝をば。

 

 

当サークルは今年度も夏コミに出展します。
スペースは3日目(8/14)の東ヤ05a、サークル名は「京都大学SF・幻想文学研究会」です。会場では新刊に加え既刊の販売も予定しています。

2016年夏コミ(C90)情報: 京大SF・幻想文学研究会ブログ

 

 今回は「SFとマンガ」というテーマで、「星雲賞コミック部門全レビュー」「星雲賞未受賞作レビュー」「すこし・ふしぎとSF」などの特集を組みました。

 僕は星雲賞受賞作として『童夢』(大友克洋)や『三文未来の家庭訪問』(庄司創)などのレビューを担当しました。

 

 手前味噌ではありますが、良いレビューが集まったクオリティの高い会誌となっていると思います。

 コミケへお立ち寄りの際はぜひともよろしくお願いいたします。

 

*****

 

 さて、ここからが記事の内容なのだが、

 個人的に、勝手に、京大SF研とは何の関係もなしに、自分が今まで読んだ星雲賞コミック部門作品のごく短い(雑な)レビューを書いていこうと思う。

 星雲賞コミック部門は創設された第九回(1978)の『地球へ…』から第四十七回(2016)の『シドニアの騎士』まで40作がノミネートされている。個人的に読んだことがあるのは半分ちょっとくらい。

 

 ※この内容は京大SF・幻想文学研究会やその会誌とは何の関係のない、個人の勝手な感想です。

 ※SF研で頒布する会誌のレビューは、これの三億倍くらいキチンとしたものなので安心してください。

 ※おすすめ度をつけてみましたが、あくまで他人に勧めやすいかの目安であって、作品の個人的な評価とは関係ありません。

 

 そんな感じで

 

 

○第九回『地球(テラ)へ…』(竹宮惠子

 おすすめ度:☆☆☆☆☆

 名作。SFマンガの中でオールタイムベスト級に好き。読み返すたびに深く心に染み入る。壮大なスケールでSF的なテーマ(コンピュータによる管理や、ポストヒューマンなど)に迫っているが、読んでいるうちにグイグイ引き込まれるので、あまりSFを読んだことのない人にも勧めやすい。

 

地球(テラ)へ… (1) (中公文庫―コミック版)

地球(テラ)へ… (1) (中公文庫―コミック版)

 

 

○第十回『不条理日記』(吾妻ひでお

 おすすめ度:☆☆

 おもいろいし、個人的に好きなんだけれど、パロディに溢れすぎていて、あまり勧めにくい。SFパロディマンガとして、良くも悪くも以降の星雲賞コミック部門の受賞傾向に影響を与えていると思う。電気羊の話が好き。

 

○第十一回『スター・レッド』(萩尾望都

 おすすめ度:☆☆☆☆

 テーマとしては古典的でありがちなんだけど、萩尾望都の手にかかるとほとんど古さを感じなくなる。ラストがすごく好き。(個人的には萩尾作品はSFより幻想寄りの作品のほうが好きなんだけれども)

 

スター・レッド (小学館文庫)

スター・レッド (小学館文庫)

 

 

○第十三回『気分はもう戦争』(矢作俊彦大友克洋

 おすすめ度:☆☆☆☆☆

 戦争を戯画化した強烈な漫画。戯画を大友の絵でやるのだから破壊力がある。戦争が希薄になってきた時代に読みたい一作。おすすめです。

 

 

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

気分はもう戦争 (アクション・コミックス)

 

 

 

○第十五回『童夢』(大友克洋

 SF研の会誌でレビューを担当した作品。詳しくは会誌を手に取っていただきたく、何卒、何卒。

 

童夢 (アクションコミックス)

童夢 (アクションコミックス)

 

 

○第十七回『アップルシード』(士郎正宗

 おすすめ度:☆☆☆

 濃密。読みにくいので人に勧めにくくはあるが、その読みにくさも密度の濃さゆえだろう。ストーリーを楽しむこともできるし、『アップルシードデータブック』を読んで、その世界設定から妄想を膨らませて遊ぶのも楽しい。黒田硫黄がスピンオフ作品を描きたくなるのにも納得。

 

アップルシード (1) (Comic borne)

アップルシード (1) (Comic borne)

 

 

○第十八回『うる星やつら』(高橋留美子

 おすすめ度:☆☆

 好きな作品ではあるのだけど、現代の読者が読んで素直におもしろいと思うかはビミョウだと思う。何でもあり感なら『らんま1/2』のほうが上のような気もするし、少なくとも高橋留美子作品の入門ではないと思う。

 

○第十九回『究極超人あ~る』(ゆうきまさみ

 おすすめ度:☆☆☆☆

 変な部活動ものの元祖にして金字塔。京大写真部の部室にもひっそりと安置されている。写真部に所属している身としては、途中1話だけ挟まれる、白黒銀塩写真についての偏った回がたまらなく好き。「世はなべて3分の1」「ピーカン不許可」「頭上の空白は敵だ」。これが星雲賞を受賞しているのはちょっと謎だが、それだけ当時のオタクに受けたということなのだろう。

 

究極超人あ~る (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

究極超人あ~る (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)

 

 

○第二十一回『So What?』(わかつきめぐみ

 おすすめ度:☆☆

 主人公の他者との交流・成長を丁寧に描いた作品。ただ、異世界混線ファンタジー設定なのだが、異世界を掘り下げられていないような気がして、SF作品である必要があったかどうかやや疑問。

 

○第二十三回『ヤマタイカ』(星野之宣

 会誌レビュー担当作。会誌では書けなかった感想をそのうちこのブログでも書いてみたいなあと思っている。

 

ヤマタイカ (第1巻) (潮ビジュアル文庫)

ヤマタイカ (第1巻) (潮ビジュアル文庫)

 

 

○第二十五回『DAI-HONYA』(とり・みき

 おすすめ度:☆☆☆

 ディズトピアものでギャグは意外と珍しいような気がする。巨大資本による書籍市場の独占はなかなか現代的なテーマ。見かけはギャグでも描いてるものは真剣なイメージ。

 

 

○第二十七回『寄生獣』(岩明均

 おすすめ度:☆☆☆☆☆

 歴史に残る名作。今さら僕ごときがお勧めするまでもないと思う。読んで。

 

○第二十八回『うしおととら』(藤田和日郎

 おすすめ度:☆☆☆☆☆

 藤田和日郎は、連載の中で、後付け設定や少し無理がある展開を纏めていき、最終的には少年マンガの理想形のような大団円まで持っていってしまう、そういう力強さをもった作家だと思う。その力技が最もうまく発揮されたのは『からくりサーカス』だと思うけど、『うしおととら』も勝るとも劣らない。

 

○第二十九回『SF大将』(とり・みき

 おすすめ度:☆

 パロディマンガ。SFマニア向け。

 

○第三十三回『プラネテス』(幸村誠

 おすすめ度:☆☆☆☆☆

 最高。アニメ版も大好きだけど、ストーリー自体はマンガ版の方が好き。

 

○第三十四回『クロノアイズ』(長谷川裕一

 おすすめ度:☆☆☆☆

 マイナーSFマンガの当たり作。SF設定が独創的でおもしろく、キャラクターの魅力でぐいぐい進むストーリーが心地よい。この作品が埋もれてしまうのは、あまりにもったいない。

 

クロノアイズ 1巻

クロノアイズ 1巻

 

 

○第三十五回『彼方から』(ひかわきょうこ

 おすすめ度:☆☆

 異世界転生もの。正直あまりおもしろいと思わなかったが、それは僕が異世界転生ものがあまり好きじゃないからかもしれない。主人公が爆弾テロに巻き込まれて異世界へ飛ばされる設定は白石晃士の『オカルト』を彷彿とさせる。

 

○第三十九回『20世紀少年』『21世紀少年』(浦沢直樹長崎尚志

 おすすめ度:☆☆☆

 個人的に浦沢直樹のマンガが苦手なので、評価しにくい。子供の空想が現実を覆っていく展開は好きなはずなんだが、サスペンス部分が今一つ好きになれない。よく浦沢直樹のマンガは「顔マンガ」だと言われるが、顔・表情以外の要素で魅せるマンガの方が好きなのかも。「ともだち」や巨大ロボットの造形は好き。

 

○第四十二回『鋼の錬金術師』(荒川弘

 おすすめ度:☆☆☆☆☆

 大傑作。ラストまで全くダレず、各キャラごとに見せ場を作っているのがすごい。ただ、この作品を星雲賞にノミネートすることもなかったんじゃないの、とも思う。大ヒットしてるし。

 

○第四十四回『星を継ぐもの』(J.P.ホーガン星野之宣

 レビュー担当作。

 

星を継ぐもの 04 (ビッグコミックススペシャル)

星を継ぐもの 04 (ビッグコミックススペシャル)

 

 

○第四十五回『成恵の世界』(丸川トモヒロ

 おすすめ度:☆☆☆☆

 SFガジェットが楽しいラブコメ。SFラブコメもののなかでも特にバラエティに富んだ作品で、作者の引き出しの広さに驚かされる。設定が『ひとりぼっちの地球侵略』にちょっとだけ似ているが、連載開始はこちらの方が10年以上早い。

 

 

○第四十六回『もやしもん』(石川将雅之)

 おすすめ度:☆☆

 う~ん。この作品が星雲賞を取っているのはよくわからない。良く言われるように、主人公の「細菌が目視できる」設定があまり活かせていないのは本当だし、後半になるにつれ雑学マンガの側面が大きくなっていって、物語としての魅力は削がれていってしまったように思う。オリゼーかわいい。

 

 

 

 

そんなところです。