『白馬のお嫁さん』『消滅世界』――男性の妊娠
『白馬のお嫁さん』(庄司創)の最終三巻を読んだ。
良いSFラブコメだった。
庄司創作品ということもあって頭でっかちなのだけれど、『勇者ヴォグ・ランバ』あたりに比べると今作は良い感じに肩の力が抜けている。
ただ、あっという間に終わってしまった感じはあって、「産む男」の設定でもっといろいろ描いてほしかったなあという気持ちもある。
『白馬のお嫁さん』の魅力はユートピア的な近未来を描きながらも、問題意識と批評性がしっかりとその根幹になっているところだろう。
この点は、これも最近読んだ、男性の妊娠を露悪的・ディストピア的に描いた村田紗耶香の『消滅世界』とは好対照だ。
『白馬のお嫁さん』と『消滅世界』。両者の問題意識はかなり違うところにありながら、しかし、どちらも作中で「男性の妊娠」が「希望」となっているのがおもしろい。
『白馬のお嫁さん』では男性のバラエティとして、『消滅世界』では共同体全体で子供を産み育てる合理性のために。
描かれ方は違うけれど、読んでいると本当に男性の妊娠は希望なんじゃないかとも思えてくる。
少なくとも、今目指されている方向での男女平等を成り立たせる一番てっとり早い方法なんじゃないか。